暮らしを写す1枚の写真
スタジオライズ 代表 岩浪睦さま
住宅建築の撮影だけで言うと、たとえば平屋の外観撮影の場合、建物が横に長いですから、建物の端から端まで画角に入れて撮影します。いわゆる「ヨコ」で撮ることになります。ただ、編集者や制作者によっては空を上まで伸ばした状態でレイアウトしたい場合があります。そうすると建物から引いた(離れた)ポイントで「タテ」で撮影することになります。そういった「どのように写真を使うか」を知らないと、または考えないと、お互いの作業にとっていいモノにはならないんです。パンフレットや冊子なら、サイズや横開きか縦開きなのか。webサイトならフルスクリーンでレイアウトするのかなどです。「仕上げ方」によって撮り方も変わるのです。
イメージを持って撮るということ
ミライエアーカイブスやミライエwebサイトで掲載されている写真を撮影させてもらっていますが、事前に(または現場で)こういったレイアウト、こんな感じに、この住宅ならこの辺・この角度など、その都度の現場ですり合わせを行いながら撮影しているので「あぁ、こんな感じの写真が欲しいんだな」という仕上がりがわかるんです。この仕上がりを共有することが僕ら撮影者にはとても大事なことです。それは、あくまでも素材としての写真撮影であって、自分の作品を撮っているわけではないですし、よりよいイメージの素材を提供することで、ミライエさんも暮らしている施主の方にも喜ばれる、そんな関係性があっての写真素材だと理解しているからです。
たとえばPC画面は縦横比4対6の比率です。いちばん収まりがいいのは横で撮影することです。横写真という意味ですね。そうすると画面いっぱいに、レイアウトできてものすごいパンチが出る。反対に縦で撮影すると、横長のPC画面に対しての縦ですから、比率が合わずにフルスクリーンでレイアウトしても横幅が余る、といったことを考えるわけです。
考えて撮る、感じて撮るということ
最近のカメラ機材のスペックは高性能です。ワイドレンズを使えばいい写真が撮れるのでは、という人も増えてきました。確かに高性能の機材は大切ですが、 どのように撮るかを考えるのは、やっぱり撮影者の経験や考え方に基づくものです。機材がアングルや撮影ポイントまで考えてくれるわけではありません。 住宅の撮影で考えていることは、全てを見せると情報量は多くなるので、空間やシーンを切り取るように撮影し「その先の余韻を感じさせるような1枚」を撮るようにしています。1枚の写真から大きくイメージが湧き出たり、紙面が写真中心に作られたりする場合もあります。写真の持つ力というのは目的の方向性や対象によって変化します。そういった制作全般やクライアントの意向にコミットしながら日々現場で向き合っています。
岩浪睦(写真家・フォトグラファー)
http://www.studio-rise.jp
ミライエwebの「ミライエライフ」、年1回発行の「アーカイブス」から、料理・人物など幅広なジャンルで活躍中。
JPS 公益社団法人 日本写真家協会会員
APA 公益社団法人 日本広告写真家協会正会員