シリパ岬を望む家
2024年
Nさん宅・夫40代、妻30代、子ども2人
余市町でトマト農家を営むNさんご一家。畑のある広い敷地内にはNさんのご実家やジュース工場が点在していますが、Nさんご一家の旧居は畑から離れた場所の集合住宅でした。
農家は天候が大きく影響する仕事。Nさんは深夜に激しい雨や強風が吹くたびに、畑の様子を確認するため車を走らせていました。
畑と自宅の距離に非効率さを感じたNさんは「いつでも畑の様子を見守れる場所で暮らしたい」と、畑のある敷地内に新築を決意。デザイン性を重視してSNSや住宅雑誌で情報収集を行い、「気になった数社に連絡をしましたが多くが遠方を理由に断られてしまって。唯一、前向きな返答をくれたのがミライエホームでした。モデルハウスにも足を運び、その空間にも魅せられて家づくりを決めました」と奥さんは出会いを振り返ります。
新居は1階に子ども部屋や和室といった個室群を集約。2階に水まわりや寝室、LDKなど暮らしに欠かせない要素をまとめ、上下階の移動の少ない暮らしを実現しています。
圧巻なのは海に向かって開く2階の大開口。余市湾に佇むシリパ岬をダイナミックな窓に映すリビング・ダイニングはこの家のハイライトです。「このロケーションを見た社長がリビングは2階にするべきだと提案してくださいました」と、敷地が持つ唯一無二の魅力を最大限に引き出した計画でした。
階段ホールとリビングの間に設置した暮らしの雑多なものを受け止める大容量の造作収納や、洗う・干すが完結できるスロップシンクを備えた広いランドリールーム、畑の様子をいつでも確認できるように位置を検討した窓計画など、農作業と家事を両立する多忙なNさんご一家の暮らしを新居がアシストしてくれます。
広大な海とシリパ岬は、疲れを癒やし、仕事へと向かう活力。「見慣れていたはずの景色なのに、毎日見ほれてしまいます」と笑顔で語る奥さんでした。













FROM DESIGNER設計者より
札幌から見れば余市町は遠方ではありますが、この場所は高速余市インターを降りてすぐ5分ほどで到着します。札幌市内でも場所によってはもっと時間のかかるところもあるわけですから、遠方だからお断りするなどという思考はなかったですし、農家さんの住宅だということで面白そうな家になる予感がしていました。
建築予定地の敷地といいますか畑といいますか、広いトマト農地の中で、計画過程で3回場所が変わって今の場所になっています。2番目の予定地がNGになった時、Nさんも私も実は少し諦めかけましたが、トマト苗をつくるビニールハウスが立っている場所が、奇跡的に地目上の「宅地」であることが判り、しかも、海に向かって大きく開けてシリパ岬を見晴るかす絶景の眺望で、小躍りする程の感動モノでした。
農繁期は全く打ち合わせの時間が取れないという条件で冬に始まった計画は、2年がかりで予感以上の家となり、携わらせていただいたことに感謝です。


